滲出性中耳炎は小児の代表的な病気です。放置しておくと後遺症として難聴を残すこともあり、きちんとした経過観察が必要なのですが、
「ずっと通院しているのに、なかなか治らない」
「いまどういう状態なの?良くなってるの?悪くなってるの?」
「いつまで治療が必要なのか、わからない」
といったように不安や疑問を持っているお母さんも多く、なかなか治らないため通院先を変えたりするケースが多くみられます。
たしかに難治で鼓膜チューブの挿入が必要になることもありますが、多くの場合は成長とともに自然に良くなることも事実です。それだけに子供さんの年齢や素因、中耳炎の状態に合わせて治療方法を選択していく必要がある病気です。
当院では、できるだけ不安や疑問がないように病気の説明をするように努めています。また、実際にモニター画面を通して鼓膜の状態を一緒に確認できるため、よくなっている実感を共有することができます。
滲出性中耳炎は、鼓室(中耳)に液体がたまっている状態の中耳炎です。本来、中耳は空気で満たされており液体は貯まっていません。それでは、どうして液体が貯まってしまうのでしょうか?
ここで重要なのが耳管の働きです。
(図1)は中耳と耳管の関係を模式的に描いた図です。
私たちは耳管を通して中耳の換気(空気のいれかえ)や排泄(中耳に貯まった分泌物を出す)を行い中耳の気圧の調整をしています。
図1
耳管が正常に働かないと、中耳の換気や排泄ができなくなります。この状態が続くと中耳が陰圧になるため鼓膜が内側にへこんでいきます。(図2)
図2
中耳の陰圧状態が続くと、圧に引かれて周囲の粘膜から水分が滲み出て(にじみでて)中耳に液体が貯まります。(図3)
図3
(正常な鼓膜)
(滲出性中耳炎の鼓膜)
鼓膜がへこんで茶色い液体が貯まっていま
す。
ある程度の年齢になると
「耳が詰まったような感じ(耳閉感)」
「耳に膜が張ったような感じ」
「音がこもる感じ」
「聞こえにくい」
といった症状を訴えることができます。
しかし個人差はありますが、小学校低学年頃までは自分から症状を訴えることが少なく注意が必要です。
注意深く子供さんの様子を見ていると、聞き返すことが多かったり、テレビの音が大きい、テレビに近づく、耳をよく触るといった行動がみられることがあります。